EC運営の基礎その1、ストア開店準備小売業としての基本を押さえる。

ECサイトを考える場合、意外とおろそかにされがちなテーマが「小売業としての基本」についてです。

ECというのは、基本的には小売業であり販売ツールがインターネットを使ったWEBサイトである、というものですから、まずは小売業として成功するための基本がきちんとできているかどうかがもっとも重要な部分になります。

この点については、弊社では何度もいろいろなメディアを通じて言ってきたつもりですが未だにECを語るときにおろそかにされているように思えます。
しかし、弊社ではEC成功のためのもっとも重要な部分は、小売業としての基礎の構築にあると考えています。

極論してしまえばECの成否の7割はこの段階で決まると言って良いと思います。小売業として、どう競合に競り勝っていくか?このテーマの答えが出るまでは、WEBがどうの、出店モールがどうのといったことを考える必要はありません。むしろ考えるべきではありません。

では、大きくどのような点を押さえていけば良いのでしょうか。

1,商品
当たり前ですが、これがもっとも重要です。
商品については、質と量の双方からアプローチする必要があります。
質はいうまでもなく、商品力。価格に対してどれだけ価値を提供できる商品であるか?ということです。
いわゆるプロバー商品を扱う場合は、商品そのものは他社と同じものを扱うことになるわけです。価格に対してモノの価値を上げ下げするのことができないわけですから、当然価格の方を調整することになります。
プロパー商品を扱う場合、価格競争が避けられないのは至極当然のことといえます。
量というのは、まずは全体の商品数。
基本的には多ければ多いほど良いと考えてください。ECが実店舗に比べもっとも優位な点は低コストで販売商品数を増やせるという部分です。坪効率といういうものをほとんど考えなくて良いECの利点はフルに活用しなければなりません。
さらには、ひとつひとつのSKUそのものの販売可能数という意味での量もあります。
人気の商品があるとしたら、それをどれだけ多く確保できるのかというのは非常に重要なテーマになります。
特にECでは「売り切れ」という状態は、ユーザーに非常に不快感を与えます。単純な機会損失以上の損失があると考えたほうが良いでしょう。
これらは、在庫政策、資金計画に密接に関係します。言い換えれば資金計画、在庫政策をキチンと立案していくことと切り離しては考えられないということです。

2,マーケティング
マーケティングというと少々広義になりすぎますので競合比較と言い換えても良いと思います。
商品のところとリンクしますが、自社で販売する商品が競合他社に対しどのような優位性があるか?ということです。
残念ながら多くのECはここが非常に曖昧なままビジネスを展開しています。
ポイントは大きく分けて
価格優位性、商品構成、販売付随条件
の3点になります。
もちろん、一番良い商品で商品数も抜きん出ており、最安値、なら売れるのは当たり前ですが、そんなことはありえません。
しかし、理想はそこにありますので、どれだけベストの状態に近づけるか?が重要なテーマになります。
この場合、ストアの力というのは、3点の総合力になります。
例えば、Aという人気商品を扱っていたとします。
競合に比べ価格設定はどうしても少し高くなる。しかし、例えば送料等の部分が安くできるのであれば支払い額で優位にたてるかもしれません。送料がそれほど変わらないとしても、商品点数が多かったら?Aと一緒にBも欲しいユーザーはAとB両方を買える店での総額で比較します。
このように力点をどこに置くか?どのように組み合わせれば優位点を築けるか?を精査する必要があります。
これには前提として競合調査が必要ですがECの場合、WEBを何日か巡回すればおおよそ競合の状況は把握できます。

3、利益構造
簡単にいえば、どのようなビジネスモデルでショップを運営するのか?ということになりますから当然利益構造とセットで考える必要があります。
商品の売価設定は利益額に直結しまし、送料や各種手数料、在庫金額などすべて利益に影響を及ぼします。

4、資金回転
さらには、資金回転もセットで考える必要があります。特に小売業というのは、その特性上、営業利益があがるようになるまではある程度時間が必要です。
一方、クレジットカード、代金引換以外は売掛に相当するのものがなく、その回収スパンも非常に短いため、資金が回転しやすいという特性があります。
私自身の経験でも、月商3000万程度でも純利益は出ず、キャッシュフローだけで経営していたこともあります。
おおよそ、上記の4点をセットにして考えストアの強み、勝負どころを決めていくことになります。
この部分をおろそかにしてショップを立ち上げても100%失敗します。
非常に大事な部分ではありますが、ここをツメていくのは非常に大変な作業であり、しかも一筋縄ではいきません。
ストアの開店作業のように目に見えて日々進歩するわけでもありませんし、自分の店ができているという実感がもてるわけでもありません。
どうしても、早く楽なほうにいきたくなりますが、この段階をおろそかにして先に進むのは飛び降り自殺のようなものです。

十分に時間をかけ、納得できるモデルを創り上げてください。

EC運営の基礎その2、ECの特殊性を考える

前章で「小売の基本を押さえる」ことの重要性について説明をしました。
さらに、この章ではECの特殊性を加味して考えてみたいと思います。

今やECで売っていないものは無いと言っても過言ではないくらいあらゆる商品が販売されています。
しかし、商品の種類によってはECとの親和性が低く販売に注意が必要な商品や販売形態があります。
以下にいくつか具体的に例をあげてみたいと思います。

1、配送に不向きなもの

当たり前のことですが、ECの場合あくまでも一種の通信販売ですのでオーダーから客先に届くまでには「配送」というステップを踏まなければなりません。
賞味期限が1日しかないような食品などは当然販売できません。
それは極端かもしれませんが、入手までの速度が問題になるような商品は基本的には、あまりEC向きではありません。
amazonはプライムサービスで、この問題をかなり解決をしましたが現時点では匹敵するサービスを個々の事業者で実現するのは困難です。
また設置工事が必要なものなども、販売不可能ではありませんが綿密なモデルを作り上げないと販売数量が伸びたところで大きな問題が発生する可能性があります。

2、1点ものやセレクトショップ

これは、小売の基本のところで説明した商品の「量」という部分に関係します。
実店舗では成り立つ1点モノの販売やセレクトショップは本来はECには不向きです。
ECの利点は、1枚の商品ページが無数にオーダーを取ってくれるという部分にありますので、ひとつ売れたらおしまい、では余程のことが無い限りコストがペイしません。
売れるたびにページも下げることになりますからSEO的な効果もまったく見込めず、集客も困難を極めます。
1点ものほどでは無いですがセレクトショップというのも同じような問題があります。
実店舗の場合、人間が見て回れる商品数には限度がありますから、カテゴライズされたテイストが気に入ればユーザーにとっては非常に楽しめる空間となります。
しかしECの場合ユーザーが比較検討可能な商品数が飛躍的に多くなりますので、実店舗と同レベルの商品数では、ユーザーの満足感を得ることは相当に難しくなります。
さらにいえば、ECでセレクトショップと銘打ったストアの傾向として、商品数が極めて少量であるという問題もあります。
実は商品数が十分であればセレクトショップ型のコンセプトはけして間違いでは無いのです。
「大量の商品を扱う余力が無い」から「セレクト式にして少数に絞り込んで販売する」という考え方自体は間違っていません。
問題なのはその商品数の規模です。
先に記載したようなユーザー心理の部分もそうですが、例えば街中のコンビニには大凡何種類の商品が売られているかご存知でしょうか?
あの坪数で約2500の商品が陳列されているわけです。
絞って売る、といっても100や200では相当特殊な商材で無い限りは、数の魅力には勝てません。
特にファッションや雑貨などの場合は1000点以下では、かなり練りこんだビジネスモデルでないかぎり難しいといえるでしょう。

3、サイズ等の問題がある商品

実はこのジャンルの商品は売れています。レディースファッション、ランジェリー、靴。ECでは相当の流通額を誇る商品群です。
しかし、あえていえば本来的には不向きです。
各社、この問題を解決すべくモデルの起用、試着感想の表記など工夫を凝らしています。靴などに限ればメーカーものであれば街中で試着、ECで購入という流れも期待はできます。
ただし、ひとつ認識していただきたいのはけして問題が完全に解決されたから売れているわけではない、ということです。
上記に記したように不安感を可能な限り消すようなサービスを展開したとしても、やはりサイズ等の不安は消えません。
故に、その不安を補ってあまりあるメリットを提供できているかどうかがカギとなります。
商品数、品揃え、価格などで実店舗を上回るメリットを提供しているからこそ、なのです。
それらが実現できない場合は不安感のほうが勝ってしまうことになります。

上記はあくまでも一例ですが、ポイントは
商品を手にとって見れない不利益をカバーできるだけのメリットげ提供できているかどうか
です。
ユーザーにとっての不利益、ネガティブブランチが0になる、ということはほぼありえませんので、メリットがどのくらい上回るか?がストアの魅力に直結します。

EC運営の基礎その3、ストア開店準備

さて、実際にECを開店する場合採用するシステムや出店方法で頭を悩ませることになります。
大きく分けると独自ドメインやASPでの展開かモール出店か?というのが最初の選択になります。
コスト面だけで見ると、モールの場合あまり大きな差が無く、独自の場合は採用するシステムにより価格は千差万別になります。

現実的に見ていくと、多くの場合モールへの出店が無難でしょう。

独自を採用するのが有効なのは
一定以上の予算がある大型案件
個人の趣味
の2つのパターンでしょう。
一定以上の初期投資が可能な場合は、自由度の高いシステムの採用により自社に最適な商品陳列が可能になったり、機関システムとの連携が可能になることでオペレーションコストを低く抑えられるなどのメリットがあります。
そこまでの予算が無い場合は独自は見合わせたほうが良いでしょう
月額1000円以下、といったシステムの安さのみにつられてASPを使い独自ドメインで開店する、というのは非常に危険です。
単に自分のストアがある、という自己満足のためだけでしたらそれでも良いのですが、曲がりなりにもビジネスとして考えているのであれば、開店後の集客その他まで考えて総合的に判断する必要があります。

独自ドメインで開店する、ということは検索エンジンで集客するか、どこか集客力のあるサイトに広告を掲載するか、くらいしか初期の集客方法はありません。
初期予算数千万というクラスの案件と同等の土俵で戦うわけですから、普通では喧嘩にすらなりません。
中小レベルで独自で開店しても可能性があるのは、極めて趣味性が高く、出店者がその趣味に対して高い見識があり、ブログ等で一定以上のファンがすでに獲得できている、といった場合に限られます。
簡単にいえば集客源が自前で用意できる場合ということです。
身も蓋も無い言い方になりますが、単純にモール出店コストが高いという理由のみで独自のASPを選択するのであれば、月にひとつふたつ売れれば良い、くらいに考えるべきです。
モール出店の金額が大きな負担になるようであれば、今の段階では出店しない、というのが最良の選択になります。
資金を用意するか、ソーシャルメディア等で一定以上の自前集客が可能な状態になってからEC参入をあらためて検討したほうが良いでしょう。
ECに関連する多くの事業者は、安いコストで自分の店がもてる、といったことをことさら強調し、勧誘をしますが、ほとんど違法スレスレの商行為であり、道義的には本来許されるものでは無いと思います。
極めて特殊な商材がある、独自の集客導線がある、などの資産が無い場合低額といえど、ほぼ例外なくドブに捨てることになりますから十分に注意してください。

さて、ではモール出店の場合です。

楽天42%、アマゾン14.1%、Yahoo!6.9%

ECにおける、各モールのシェアです。
一目瞭然で流通総額は楽天独走という状態は変わっていません。
アマゾンは急激に伸びており、あっという間にYahoo!を抜き去り差を広げていますが、アマゾンのシステムにきっちりと乗る商材で無い場合は、まだまだ難しい面があります。
特に食品等の場合十分な説明ができない今のシステムでは難しいでしょう。
一方型番商品に近い商材であり、かつアマゾンのプライムサービスに乗れるような商材であればオペレーションもかなり工数が少なく、ページの作り込みのコストなどもあまりかからない分、大きな可能性があります。該当商材の場合は選択肢として検討されると良いでしょう。

楽天、Yahoo!などの従来型モールの場合は、今更ここで細かく書かなくてもいくらでもうんちくがあると思います。
ポイントは、一定の広告宣伝費を必ず初期予算に組み込んでおくことです。
どちらのモールも基本的には「売れている商品をもっと売る」という考え方で商品を露出しています。
簡単にいえば、売れているものはもっと売れ、売れないものはいつまでも売れない、という仕組みです。
最初そこに割って入るには現実的には、広告しかありません。
初期は特に通常の誘客導線がモール内でほとんど機能しませんので、広告以外の集客導線がありません。
通常導線や、メルマガ等で一定の集客ができるようになるまでは広告に頼る比率は高くなりますので、その分の費用を見ておかないと、独自ドメインと同じく「開けただけ」になりますので、きちんとした資金計画を作成することが重要です。

ECは、10年、15年前は「10万が1000万に化ける」ことが十分可能でした。
しかし現在では、出店数は飽和状態といってもよく、だいたいのサービスには先行者がいますので、もはやそういう時代ではありません。
それでも直接エンドユーザーと接することが可能で、かつ実店舗に比較してはるかに初期投資が少なくて済むのですから、まだまだ「100万を1000万にする」ことはできる世界です。
少し厳しいお話になりましたが、きちんとしたビジネスモデルを作って挑めば、成功する確率はまだまだ高い業態です。

EC運営の基礎その4 売上を引っ張る商品

パレートの法則、については今さらご説明するまでもないと思います。
ところがECのプロダクトミックスの場合、一般的にはなかなかこの法則が当てはまりません。

一般的な傾向としては、突出して売れる商品がいくつかあり、その他多数の商品が
ロングテールを構成する、というパターンになることが多いようです。
簡単にいえば、80対20にはならず90対10だったり95対5だったりします。

初期のストア、また売上が思うように伸びないストアは「突出して売れる商品」が無く、売上を伸ばすとっかかりが無い、ということが多いようです。

売上を伸ばしていくためには、なんとか「突出して売れる商品」というものをひとつでも良いので確保する必要があります。
もちろん、独自ドメインでストアの知名度がある、というようなケースではストア名での囲い込みが可能ですから、この傾向は弱くなりますが、一般的なストアの場合は売上を引っ張る商品を育てることが全体の売上を伸ばす早道であることが多いようです。

特にモール出店の場合は、その傾向が顕著です。
モールはその特性上、ストア名云々よりも商品を切り口としてモール全体の商品をソートして表示します。
ひとつでも売れている商品があれば、その商品を入り口としてユーザーを誘致することが可能になります。
一部上場クラスの総合通販がモールでは、なかなか上位にいけないのも、このような理由によるところが大きいでしょう。

また、コスト面から考えても1000なり2000なりの商品に均等に力を入れるというのは、あまり現実的ではありません。
余程スタッフが充実していればともかく、大体において十分に機能していない商品ページが数だけあがる、ということになりがりです。

資金的制約、スタッフの問題などお持ちのリソースによりプライオリティは変わってはきますが

1、可能な限りの商品数をアップする
2、売上を牽引する可能性のある商品のページ、導線等を徹底的に検証する
3、アドバタイジング等を織りまぜ、売上を牽引する可能性のある商品の露出を増やす
4、売上を牽引する可能性のある商品からの回遊導線を精査する。
5、回遊されている商品の商品ぺージ等をテコ入れする

という順番で進めるのが比較的効率が良いでしょう。
あとはこのサイクルをふくらませていくことになります。

また、売上を牽引する商品にも「寿命」というものがあります。商品のライフサイクルが終わる前に、また別の商品で同じサイクルに突入していくようにしていくことが重要です。

売上を牽引する商品が探せない場合、次善の策としては「誘致が多い」商品を前面に出すという方法もあります。
つまり単価が低く売上には貢献しないが数は出る、という商品です。
特にモールが全店舗の商品の表示優先度をつける場合、販売数というファクターはかなり重視されます。
これは当たり前で500万の商品がたまたま売れたとしても、その商品を求めているユーザーが多いとは考えにくいですから、数が出ている商品を露出する、という考え方になるわけです。
一種の広告塔として考えれば、このような商品も売上を伸ばしていく上では非常に重要な商品といえます。

EC運営の基礎 その5 こだわりの店は必ず失敗する

良く「こだわりの店をやりたい」といった内容のご相談を受けます。

「こだわりの店」といった語感は、普通ポジティブに捉えられていますから、そのせいもあるのかもしれません。
もちろん、小売業を営む以上サイトの規模に関わらず「こだわり」というものは重要です。
これは小規模ショップから上場企業のショップまで同じです。

しかし、相談を受けるケースは十中八九「こだわり」の意味を履き違えています。

商品の鮮度にこだわる、発送の速度にこだわる、価格にこだわる、など消費者にきちんとメリットがある部分で「こだわり」を発揮するのは良いことだと思います。
他店にできないサービスや品揃え、価格など消費者に対して説得力のある部分でのこだわりは競争力を高めます。

言い換えれば「自社が勝負していく上では、このフィールドは譲れないので徹底的にこだわる」とう姿勢は正しいということです。

ところが下記のような「こだわり」は大変危険です。

「この商品は気に入ったから、これを売る」
「自分の趣味にあった商品を選んで共感してくれる人に買ってもらえるようなこだわりのセレクトショップでやっていく」
「自分が作ったこの商品はこんなに良いんだ。だからこれにこだわって売っていく」

これは、こだわり、というよりただのワガママです。
小売業というものは自分の価値観にお客様をあわせるものではなく、お客様の価値観に自分をあわせるのが仕事です。
個人の趣味であれば結構。
気に入った人にだけ買ってもらえれば良い、というスタンスでも構いません。
しかし、そのスタンスでいくならそのスタンスに徹底するべきです。
つまり、売上や利益を気にしてはならないということになります。

一昔前、ガンコオヤジ系のお店をマスコミが面白おかしく取りあえげていたことがありました。店に入ったら喋ってはいけないラーメン屋とか食べ方をいちいち指図するような店が「こだわりがあって」「だからうまい」的な論法でもてはやされていました。
まぁ、お話のネタとしては面白いかもしれませんし、一時的な流行りはあるかもしれませんが、所詮これらも趣味の延長です。
こういう店がビジネスで大成功したという話を聞いたことがありません。

それでも立地条件に守られているような小規模なビジネスであれば食べていくことぐらいできる可能性はありますが、もともとECという業態は成功か失敗しか無いビジネスですので、「食べていくことぐらいできる」というビジネスサイズにコントロールすることが難しい業種であり、まったく参考にはなりません。

商品や価格設定など、小売業としての基本についてはシリーズの最初に記載しましたが、同じ事です。
いくら思い入れのある商品でも、一定の露出をして売れないのであればスパっと切り替えることができなければECでの成功はおぼつきません。

ユーザーはユーザーの都合でしか行動しないものであって、お店の都合など一切関係ありません。
ちょっとでも商品や取引条件が気に入らなければ他で買うだけです。
長い付き合いがあっても概ね関係ありません。

ビジネスとして成功を目指すのであれば、自分の価値観ではなくユーザーの価値判断を把握するように努め、柔軟に対応するのが最低限の条件になります。

EC運営の基礎 その6 ECの利益構造 その1

どのビジネスでもそうですが、特にECについては売上というものが非常に大きくクローズアップされており、多くの書籍、ネット上の情報、支援会社などが売上増について薀蓄を述べています。
もちろんこのシリーズでも。

しかし、なぜか利益についてはそういった文献もなければ、支援サービスもあまり見当たりません。
ネット上の情報を見ても、「売上をあげるにはどうすればよいか」という質問は多いのですが、「利益をあげるにはどうすればよいか」という質問は、ほとんど目にしたことがありません。

ECビジネスが「一定の売上をあげれば利益がきちんとあがる」タイプのビジネスならそれもわかるのですが、実際には真逆です。
にも関わらず、まるで売上が少し伸びれば、利益は勝手についてくるかのように利益については無視されているように感じます。

小売ビジネスの中でもECは特に取引に関わる変動費が大きく、きちんとコントロールしないと、いつまでたっても「テラ銭奉公」になるだけです。
まぁモールや、ASP等は売上課金モデルなのでマーチャントの売上があがれば利益はどうでも良いわけですから、支援体制が無いのも当然といえば当然ですが。

しかし、あくまでもビジネスの目的は利益ですし、利益構造と売上が密接に関係することは、当連載の最初でもご説明したとおりです。

コストについては、細かい点は各社各様になりますが、ベースの考え方について少し説明していきたいと思います。

・コスト管理の前提

分析、コントロールをするには当然ですが、まず正確に内容を把握する必要があります。これは「正確に」という部分が重要です。
例えば、3000円の商品を販売し、送料が500円だったと仮定します。
これを「売上3500円」として、経理が計上しているようではお話になりません。
少し極端な例かもしれませんが、中小規模の企業の場合売上の増加に伴う処理量の多さに内部オペレーションや経理処理がついていけず、「お尻が合えば良い」という処理になりがちです。
特に非上場の企業で、経理処理は税金の申告のため、といった考えが残っている場合は非常に危険です。

上記の例は少し極端ですが、類似の処理は非常に多く行われています。
サイトのアクセス、転換率、客単価といったデーターはWEB上のシステムで把握することが可能ですが、コストについては経理データーを見るほかありません。

・固定費と変動費

これも概念では理解されている方が多いと思いますが実際のコストコントロールにおいて有効に活用されているかというと、まだまだではないかと思います。
当たり前の話ですが、変動費は売上につれて一定の比率で変動していくコストです。
簡単にいえば売れば売るだけ払いが嵩むコストなわけです。
急激に売上が伸びた翌月、宅配業者の請求書を見て慌てて資金繰りに走るといったことではいつまでたっても利益が残る体質にはなりません。

EC運営の基礎 その7 ECの利益構造 その2

当社のブログ等でたびたび触れている話ですが、利益について考える場合最低限ただしい財務諸表の作成と、その読みこなしは不可欠です。

難しい話は専門の本にお願いするとして、まず根本である「粗利益」と「営業利益」について考えてみたいと思います。
もちろん弊社は会計の会社ではないので、税務署に出す書類になんと書くのが良いのか、という話ではなく、それらの利益の数字が意味するところを読んで、販売戦略の立案に役立てていただくのが目的です。

・粗利益

簡単にいえば「売上-売上原価」です。これは皆さん理解されていることと思います。
ここで考えるべき点は2つあります。
ひとつは粗利益が決定される要素はなんだ?ということです。
算式に出てくるのは、売上と売上原価しかありません。ということは売上があがるか、売上原価が下がれば粗利益は増える勘定になります。
これも皆さん理解されていることと思います。

問題はここからです。
売上原価が変動費である以上、ここでいう売上というのは売価に近い意味になります。
個別商品ごとに粗利益を算出することを考えていただければすぐにわかると思います。
と、いうことは「売価をあげるか」「仕入れを下げるか」で、個別商品の粗利益率はあがります。
ところが、もうひとつ考えなければならないのはストア全体の売上です。
粗利益率をあげるために好き勝手な売価をつければ、売上高は当然下がります。
ですので、皆さん意識しているにせよ、無意識にせよ「最大限の粗利益があがる売価」を模索して、売価決定をしているはずです。
ということはどういうことでしょうか?

売価はマーケットの状況に左右されるということになります。
つまり、売っている商品の商品力が強ければ売価は比較的強気に設定が可能で、粗利益も高くなる、ということです。
逆に売っている商品の商品力が弱ければ、マーケットの圧力にモロに負けますから売価は下がり、粗利益は減ります。

すなわち「粗利益」が現しているものは扱っている商品の商品力だということになります。商品力というのは必ずしも市場の「人気」という言葉とは同義ではありません。
市場で人気があっても、同じ商品を扱っている競合が多いようなものは商品力としてはけして強くありません。極端なことをいえば「需要が多く」「独占販売」の商品があれば売価は好き放題につけられます。
自社のみで売っている人気のブランド品などは、これに近いことになります。

いくら以上で売らなきゃ儲からない、とかこれ以上下げたら赤字だ、という観点で売価を決めるのは普通といえば普通なんですが、「なぜ儲かる値段で売ることができないのか」という点をツメていかないと、問題は解決しません。
・売上原価と仕入れ金額

単純にいえば、ひとつの商品を売った場合、その商品の売上原価と仕入れ金額は原則一致します。しかし、総額でいったらこれは全然一致しません。
ある商品を100個。500円で仕入れたとします。仕入れ金額は5万円です。

1、売価2000円で20個売った
2、売価600円で完売した

上記1のケースでは、粗利益は3万円になります。2のケースでは粗利益は1万円になります。
しかし、手元キャッシュは1のケースでは2万円ショート。2のケースは1万円残ります。

つまり粗利益3万円ではオカネが不足し、粗利益1万円だとオカネが残ったということになります。
これの極端な例が黒字倒産というヤツです。

一般的に資金繰りを考える立場の中小企業の経営者の方は、1の例に対して「損をした」という感覚に陥ります。
しかし正確には、2のケースよりも利益はあがっているわけです。
こういった問題は、単純に売価設定や販売方法にのみ原因を求めるのは少し違いますね。
もちろん無茶な売価設定をして販売数が伸びなかった場合、このような問題は大きくなりがちです。しかし、もし売価が適正と考えられ、2000円で20個売ったのが営業的には妥当であるならば、資金繰りのため600円で売るという選択肢は本来取るべきではありません。もちろんカネがなきゃ仕方ないんですが、それは経営的な問題が大きい部分ですから解決方法も資金の借入や、支払いサイトの見直しなどになってきます。
粗利益という要素だけをとってみても、ざっとこれだけ考える要素があり、運営の舵取りは簡単ではありません。
数字を正しく理解し、問題を切り分けて最適な解決策を探していく、という作業がストアの運営基盤を強固なものにしていきます。

例えば、売価が高くできず支払いに追われている状況で、とりあえず投げ売りして資金を確保する、というアプローチのみで終わってしまうストアと、有利な条件での仕入先の開拓や、支払い条件の変更のための努力などを同時に行い続ける店とでは数年後に大きな差がついてきます。