経営に生かすための財務諸表の読み方作り方 その2

今回は、一番誤解の多い「売上」「仕入」「売上原価」「利益」「キャッシュ」の関係について説明をしてみます。

経営をする上で一番重要な要素ですが、いまひとつ理解ができていない方が多いですね。
これは、損益計算書と貸借対照表の成り立ち上、感覚値とズレている部分があるからです。

まず、売上についてはあまり問題はありません。というか間違いようが無いですね。

次に仕入れ、ですが、仕入れ金額がそのまま計上される費目というのはP/Lには存在しません。
売上原価と仕入れ金額というのはまったく別物です。

簡単に言うと

「仕入れ金額」=その月に仕入をした金額
「売上原価」=その月に売り上げた商品の原価の和

です。簡単じゃないですか?

例えば、茶碗を1000円で50個仕入れたとします。
仕入れ金額は5万円です。

これを5.000円の売価をつけて売った。
5個売ったときに数字はどうなるかというと。

売上高=25.000円
売上原価=5.000円
粗利益=20.000円

便宜上、仕入は現金の即払いで、売上金も全額即回収とします。
するとキャッシュは

イン=25.000円
アウト=50.000円

で差し引き2万5千円のマイナスです。

では売価を1100円としたとします。
これで50個全部完売したとすると

売上高=55.000円
売上原価=50.000円
粗利=5.000円

このときのキャッシュは

イン=55.000円
アウト=50.000円

で、差し引き5000円のプラスです。

この二つのケースで経費が15.000円と仮定します。

すると最初のケースでは

粗利益=20.000円
経費=15.000円
利益=+5.000円
キャッシュ=-25.000円

二番目のケースでは

粗利益=5.000円
経費=15.000円
利益=-10.000円
キャッシュ=+5.000円

となります。

上は利益が出ているのにカネが足りません。
下は赤字なのにカネは増えます。

上のケースでは売れ残った商品は「在庫」としてバランスシートの「棚卸高」に計上され資産となりますが、実際には売らない限り現金は入ってきません。
稀にある黒字倒産というのはこのような場合に発生します。

この数字を感覚的に把握しようとするのはかなり無謀で、必ず損益計算書と貸借対照表を見ながら正確に把握していかないといけません。

キャッシュが不足してから慌ててダンピングのセールをやっても間に合いません。
また、キャッシュがあっても慢性的に赤字ですと、自転車操業でキャッシュを回しているだけになるので、ひと月でも売上が前月を下回ったりすると途端にキャッシュがショートします。

そのような会社の「健康状態」を正確に把握しておくことが、売価の決定や仕入の決定にも役立ます。
売価設定ひとつ、仕入ひとつとっても「エイヤ」で決めてしまっていないでしょうか?

経営に生かすための財務諸表の読み方作り方 その1

前回のエントリーで、損益分岐点くらいは把握しておきましょうね、っていう記事を書きましたが、これだけではなにがなにやらって方もいらっしゃると思います。

今回から少し「経営に生かすための財務諸表の読み方作り方」っていうのを書いていきたいと思います。

多くの経営者の方とお話をして驚くのが、ほとんどの方が財務諸表は決算で税務署に提出すつためのもの、くらいに捉えているという事実です。
年に1度しか作成せず、それも経理と税務署に丸投げ。
出てきた数字をみて、これじゃ税金が高いからこうしろああしろ、っていうことに使うくらい。

これは実は非常に恐ろしいことです。
以前にも何度か書きましたが、計器を見ないで飛行機を飛ばしているようなもんで、いつ墜落しても不思議はありません。

利益が出ないのも、キャッシュがショートするのも、根本的な理由が全然わかりません。
「いや、長年自分で会社やってるんだ、それくらい数字見なくてもわかる」という方。

もし本当なら、余程売上が低く経費もほとんどかかっていないか、1万人に一人の天才かのどちらかです。

私は凡人なので、そんな恐ろしい経営はできませんでした。
ましてや小売業、ECでは必須です。
エンドカスタマーを相手に商売をする場合は、取引金額(A/C)が低く、取引回数(T/C)が多いです。
しかも在庫管理の最小単位であるSKUも多くなりますので、これが勘でわかったら本当に天才です。

財務諸表、とりわけ損益計算書(P/L)には重要な情報が沢山詰まっています。
キャシュフローはP/Lではまったくわかりませんが、どこでコストを喰っているのか、どこが改善すべきポイントか、なんてのは当然ですし、飲食業なんかだとサービスが低下しているとか、これじゃ店の掃除もできてないだろうなんてことも凡そ見当がつきます。

では、皆さんが取り入れていくにはどうしたら良いでしょうか。

まず、大前提なんですが「経理なんて1円も生まない後追い仕事」という考えは綺麗に捨ててください。
そう思うのであれば、このエントリーは読んでもムダです。

じゃ、どうしよう、という場合ですが、いくつか下準備が必要です。
これは少し時間がかかると思います。

・毎月きちんと計算をすること

これは実際には経理ソフトが無いと難しいでしょう。
あれば、簡単にできます。入力さえすれば。
コツは入力をまとめてしないことで、デイリーでするべきです。

・正しい費目に計上すること

経理担当者に任せきりですと、ここが曖昧になります。
経理担当にとっては、税法上問題が無ければ正しい計上だ、ということになります。
しかし、経営にとってはそれではダメです。

例えば、送料無料と送料別の売上があるとします。
経理は面倒なので、送料別の売上も送料と合算して(つまりユーザーから入金される金額と同額)を売上にしてしまったりします。

運賃は運送会社からの請求書で計上しますから、お尻の数字(営業利益)は合いますが、実際に送料負担がどの程度経営を圧迫しているのか全然わかりません。
ただ単純に今月はヤマトへの支払いが多いなぁ~とか、そういう感想しかもてません。
下手すると送料負担が大きいから利益が出ないんだ!
なんて飛躍した結論を導き出したりします。

この場合正しい方法は、売上は商品金額にして、ユーザーから受け取った送料分は経費費目の送料部分に計上します。
するとP/Lの費目に現れる数字は、実際に送料無料にして負担している金額だけになります。
送料を少し上乗せしていたりするケースもありますから、そのような施策のインパクトが正確に把握できます。

酷いケースでは、良く決算書のテンプレートにある「荷造り運賃」をそのまま使っているケースです。
ECでは送料や、発送資材というのは大きな変動費です。
これをゴチャゴチャのひとつの費目に計上してしまっては、経営の改善などできるはずもありません。

他にも多くの費目について同様の整理が必要になります。
費目は別に決算書のテンプレートと同じである必要は無いのですから、自社にあった費目を作成しなければなりません。

まず、ここまでが準備編です。
場合によっては経理のやり方を大きく変えることになり、経理担当者からは抵抗を受けるかもしれませんが、間違っていることは正しくしなければ経営の改善はできません。

繰り返しますが財務諸表というのは経営の指標にすべく存在するので、税金を払うためにあるのでは無い、ということを認識してください。

今更ながらBES(BEP)について

小売業というのは、そもそも在庫負担というものが非常に重くのしかかってきます。

在庫のコントロール手法はさまざまありますが、多くは販売予測に対して在庫を割り当てる考え方ですね。
しかし、販売予測ほどアテにならないものも無いので、概ね在庫が過剰になったり、品切れが続出するという結果になります。
これは、売上予測の精度に問題があるわけではありません。
そもそも売上予測なんて、当たらないので、当たらないものをアテにして在庫を手当てしなければならないという点に問題があるわけです。

この問題の完全な解決方法はありませんが、かなり劇的に改善できる方法はあります。

しかし、今日の本題はそこではありません。

小売業の投資収益率を圧迫する大きな要因である「在庫」は多くのネットショップでは問題になっていません。
最近では受注発注方式が普通になってきているので、余剰在庫が発生する率は極めて低く、在庫回転が年間100回転なんていうのも普通です。

通常の実店舗では年間3回転くらいの業種が多いので、普通に考えればネットショップで利益が出ないはずがありません。

では、なぜこうも赤字の店が多いのでしょう?

私の経験上多いのは、ネットショップだからと安易に開店してしまい、小売業の基本がまったくできていないケースです。

実店舗であれば、初期に大きな投資がかかるので当然十分な調査と準備をして開店します。
都内の23区で1Fに店を構えるとなると、なんだかんだで数千万かかりますから、慎重になるのも当然ですね。

早い話が、同じような心構えでネットショップに参入すれば良いってことなんですが、それで話を終わりにしてしまうと身も蓋もありません。

で、今回はせめてここに気をつけてくださいというポイントなんですが、それが標題の「BES」(またはBEP)

日本語でいうと損益分岐点ですね。

ネットショップというのは恐ろしいほどの変動費の塊です。

経費というのは固定費と変動費に分けられることはご存知かと思いますが、初期にはどうしても固定費負担が気になってしまいます。
ネットショップ参入が容易なのは、この固定費が非常に低いからです。
だからといって安易に参入すると、変動費の恐ろしさにあとから気がつくことになります。

小売業というのはそもそも変動比率が非常に高い業種なんですが、ネットショップはその最たるものです。
変動費が高い場合、損益分岐点を超えても利益金額は非常に薄いものになります。
固定費が高い業種の場合は分岐点までの赤字が大きいかわりに、分岐点を超えた場合一挙に利益が増えます。
しかし、変動費型の場合は分岐点を超えても経費も恐ろしい勢いで増えます。

こういうビジネスの場合は戦略的な投資や経営が不可欠で、勘でどうこうなるものではありません。

せめて自社の損益分岐点くらいはキチンと把握しておき、損益分岐に届くまではどのようにキャッシュフローを確保するかを考えることが非常に重要になります。
是非きちんと計算してみてください。

損益分岐点 = 固定費 ÷ (1-(変動費÷売上高))

損益分岐点

当たり前の方にとっては、小学生並みの話なんですが。
会社には「損益分岐点」というのがあります。

ちょうど利益が0になる売上げ地点のことで、それ以上なら利益が出ますし、それ以下なら損失が出ます。

しかし、これを意外と「感覚値」でとらえている経営者の方が多いのは少し驚いたことがあります。
費用には、「固定費」と「変動費」というものがあります。

費用が全部固定費なら、話は簡単。100万の固定費のみが経費なら100万が分岐点です。
(BreakEvenointSales=BES)

しかし、会社には必ず変動費というものがあります。
売上げが上がると、それにつれて増えていく経費のことです。

ネットショップであれば、「送料」とか「決済手数料」「モール従量課金」などがこれにあたります。
(オフィス梵天丸への成果報酬支払い!なんてのもあります(笑))

なので、BESはキチンと計算式を作っておかないと把握できません。

BESの線なんですが、固定費は必ずかかるので、総費用の下限は固定費の金額からということになります

小売業は特に変動費率が高いので、BESを超えても劇的に儲かる商売ではありません。
一方、固定費率の高い商売は、BESが高くなるので、超えるまでは赤字続きになり、その代わり、BESを超えるとドカンと儲かります

損益計算書と在庫

損益計算書上の利益に在庫金額は関係が無い。
これは長年会社を経営されている方でも、よく理解されていない方が見受けられる。
これらを知ることは、直接在庫管理の手法として役立つわけではないが、まず原理原則を正しく理解しておかないと、いろいろな局面で正しい判断ができなくなるので、最低限の知識はあったほうが良い。
法人(個人営業でもそうですが)の財務諸表には損益計算書と貸借対照表というのがあり、「利益」というものは損益計算書に基づいて算出されるものだ。
ここで落とし穴があるわけで
★★損益計算書上の利益には在庫金額は一切反映されない★★
ということだ。これをまず理解していただきたい。
極端な例になるが、1個1万円の商品を100個仕入れたと仮定する。
(お話しをシンプルにするために、消費税は無視)
すると、仕入れ金額は100万円である。
その条件で
A、11.000円で100個すべてを完売した。
(キャッシュは110万円入り、100万円の支払いをしても10万円残る)
B、50万円で1個販売して、残り99個は不良在庫になってしまった。
(キャッシュは50万円入り、支払いが50万円不足した)
というふたつの例をあげてみる。
「利益」が出ているのはどちらになるのだろうか?
感覚的にはAの方が利益が上がっているように感じてしまう。
しかし、答えはBなのである。
販管費が同じと仮定すると、利益(営業利益)を決定するのは粗利益の金額である。
この計算方法にトリック?がある。
粗利益というのは以下の計算方法で算出される。
★売上げ金額ー売上げ原価=粗利益
クセモノなのは、この売上げ原価というヤツで、これは仕入れ総額とはリンクしない。
売上げ原価は下記の計算式で算出する。
★前期(月)末在庫±当月仕入れ-当期(月)末在庫★
これに当てはめると、Aの粗利益は「10万円」。
一方Bの粗利益は「40万円」。
すると、仕入れの支払いは50万円も足りないにも関わらず利益はBの方が5倍も出ていることになってしまうわけだ。
つまり損益上でいう粗利益は、あくまでも販売された商品の仕入れ価格と販売価格の差額が積み重なって出来上がっていくので、いわゆる売れ残りはカウントされず、貸借上の棚卸資産に計上されていくだけである。
すると、40万円の粗利益があがった!と喜んでいると、いざ支払いの段になってキャッシュが50万円不足するという事態が
発生してしまうことになる。
上記のような単純なものであれば「感覚」だけで対処可能。
しかし、売上げが増加していくと、それにつれて扱い商品数も増加し、実際の店舗運営において上記のような単純な様相を呈することはまずありえない。
その為、ある程度システマチックに在庫を管理する仕組みをこしらえておかないと、いつのまにか在庫がキャッシュを圧迫してしまい売上げは伸びているのにキャッシュはいつまでもショートする、というようなことになってしまう。
この部分はアタマでは理解できてもなかなか消化できない部分。
しかし、しっかりした在庫管理をしていくためには上記の原理原則を本当の意味で理解する必要がある。