さて今回はデーターベースマーケティングについて触れる予定でおりましたが、前回の記事についてのご質問などから、ちょっと予定を変更することにしました。
今回は「マーケティング理論の限界」についてです。
マーケティングという概念そもそもが非常に広い範囲をカバーしますので、関連する理論というのは、もう名前を憶えるだけで一苦労というくらい存在します。
しかし、理論には限界があります。
まれに例外もありますが、経済学者と経営者というのは全然別の人種です。
本来であれば、マーケティングの理論に精通していれば、どのような経営環境でもそれなりの力を発揮できそうですが、現実はそううまくいきません。
なぜでしょうか?
理論を実践するにあたって、注意しなければならないことは、実践するのは「人間」だということです。
なにを、当たり前な!
という話ですが、これは非常に重要なポイントです。
人間には感情がありますし、現在の状況や慣習もあります。
ちょっと話が飛びますが、私はかつてずっと胃痛持ちでした(話飛びすぎ?)
慢性胃炎というヤツですね。
超不規則なシフトに加え、労基法なんてクソクラエの勤務体系とストレスかかりまくりのプレッシャー、生まれもっての不摂生な性格などが災いして、いつ胃痙攣が起きるかわからん、という日々を送っていました。
で、医者に行くわけです。
一通り診察を受け、薬をもらい、言われることは毎度同じ
「毎日決まった時間に食事をして、酒、タバコ、コーヒーなどは止めてください」
あの・・先生・・私、早番勤務の日は朝6時出勤、遅番の日は午後3時出勤の勤務体系で、コーヒーは味見の関係上毎日飲むんですけど・・
「でも、胃には良くありません。毎日決まった時間に食事して決まった時間に寝てください」
アホか、っていう気になってきますよね。
と、まぁ「正しい」ことでも「実践」できない環境もあるわけで、単に理論だけを突き詰めていっても主治医と私みたいなことになっちゃうわけです。
内容がエンドユーザーに対するものであれば、分母が非常に大きいので統計学的にも理論どおりに運ぶ可能性は高くなります。
しかし、社内、取引先、などみなさんの周囲の人達や環境となるとそうはいきません。
そこにはマーケティングの理論の実践を阻害する要因がいくらでもあります。
・従来の商習慣
・社内の部署間の対立
・実践する人達のポジションパワー
・他の販売ルートとのコンフリクト
など阻害要因は枚挙に暇がありません。
簡単にいえば、ある部署に「ここをこう変えましょう」という提案をしたとします。
相手が自分よりも役職が上で、頑固なヒトだったら?
「なに生意気言ってんだ」で話が終わってしまうことだって十分ありえます。
また、長年の商習慣となるともっと厄介です。
「今までずっとこうしてきたから」
「みんなこうしているんだから」
「前例が無い」
「そんなの協力してもらえるわけがない」
もう、そこら中阻害要因だらけです。
特に自由競争に慣れていない日本の小売り業界では、この傾向が顕著に現れます。
ましてや人間は変化が嫌いですから。
実際にどんな立派な理論を憶えて戦略をたてたとしても、実際に関係各所が動いてくれなければ絵に描いた餅にすぎません。
マーケティング活動で成功するツボは、案外こういったところにあったりもします。
実際に実行可能な形にどうアレンジしていくのかというが非常に重要で、本の通りにいかないのは、そのような理由によるものです。
マーケティングで成功するためには、マーケティング理論を知っているだけではなく、実際の場にあてはめて、アレンジし、関係各所に対するネゴシエーションの能力など総合的な力が必要になってきます
そのことは、是非心にとめておいてください。